過ぎた熱狂の最期はいつも虚しい。

「ヒトラー 〜最期の12日間〜」(字幕版)(2004)
視聴日:2020/06/06 Apple TV+

 あの何かあるたびにネタになる「総統閣下は大変お怒りのようです」の元ネタ映画、というとわりとご存知の方が多いと思う。そう、あれだ。

 ほとんどが総統官邸地下要塞の描写なので、バンバン人が飛んでいく、引きちぎられていく類のよくある「戦場映画」ではない。しかしどこぞの東洋の国であったかのように戦況覆すことはもう叶わない中でさっさと裏切るもの、現実的な解決策を模索して裏切り者扱いされるもの、面従腹背しつつ煮えきらないもの、負けたらもう生きる場所などないとわかっているので徹底抗戦を叫ぶもの、指導者の魅力に憑かれて最後までついていこうとするもの、その中でも自己の職責を必死に果たそうとするもの等々が色々に混ざり合って終局へ進んでいく。

 総統は毎度毎度地図を前にお怒りになるし不正確な現状認識をもとに一縷の望み繋ぎつつ結果を出せない司令官をどいつもこいつもクズだ裏切り者だと罵倒するがひとりふたりを除けば参謀・元帥・大将の誰もがそれを指摘できない。
教育の成果?か熱烈ヒトラーユーゲントが市民兵を志願するが正規軍には危なっかしくてみてられないし損害が大きすぎる。それをもゲッペルスは「志願したのは彼らだ。自業自得だ」と切って捨てるし市民の被害を憂慮する参謀にヒトラーは「生き残れなければそれまでだ(その程度だ)」と切って捨てた上に自分はさっさと自殺してしまう。

 そんな中で市街戦は激しさを増し若年市民兵はほとんど死んでしまうし生き残ったものも両親が「赤狩り」に遭ってあろうことかドイツ軍に殺されてしまう。

 とまぁ、全くもって救いのない映画だがそれを「若気の至り」とでもいうべきか興味本位?で面接を受けて総統の個人秘書官になった(存命の、あるいは生き残った)女性の視線で描く。

 いくつか描写と背景には疑念も出ているが「戦争が終局に向かう中で組織に何が起きるか」は相当詳しく描かれているのではないだろうかという気がした。

 そして総統閣下が地図を前に激怒する以外の場面では相当に優しい、ということも含め、人間の本当の狂気みたいなものが伝わってくる。

 これをみてからパロディを見る(あるいは作る)のもまたオツなものかもしれない。平和って本当に良いなぁ、と噛み締めながら。

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