本当に憎むべきは・・ [「火定」(沢田瞳子/PHP研究所)]

久々に歴史ものの文芸書を買いました。

少し日本史に触れたことのある方なら聞いたことがあるでしょう。
天平時代に権勢を誇ったあの「藤原四兄弟」。

彼らが相次いで倒れた、天然痘の流行(まさにパンデミック)、その中であるものは巻き込まれながら、
あるものは様々な目的で集まり奮闘する施薬院の医師や官吏たち。
奮闘ぶりを描きつつ、物語はその上下左右に広がっていく
そのきっかけは新羅への使節団が持ち帰ったものだったが、彼らがどうしていたのか。
流行を鎮静化させる治療法は誰にどう試されて失敗し、どう生かされたか。
今よりも格段に技術や情報のない中で庶民は何に動かされてどうなったのか。
階級社会のしがらみ、妬み、陰謀、それを乗り越える知恵。
日々増え続ける死者と、それでも生き残った者が生きる意味とは、医療とは。
でも推理小説チックな、かつノンフィクション的な読後感は、おそらく
舞台は天平だが扱っているのは普遍的な、あるいは驚くほど変わっていない
かもしれない、人間の深層心理や意識だからかもしれない。
そんなことを考えました。六甲アイランドから九州に向かうフェリーの中で。

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