乗りテツは北にいる(Epithode 6 : 怒涛のごとく淡々と、南へ (その1) )

稚内駅へ戻った。あと1時間ある。
映画を見てしまうと乗り遅れるので、郵便局へ行ってすでに膨れた荷物を整理していらないものをゆうパックした。(パッキングが甘い・・)

そして駅のセコマ(!)へ戻って空気を堪能する。北海道といえばセコマ、セコマといえば北海道。(北関東の方には申し訳ない)
ついでに買い出しもして、隣の土産物屋で何か話題になりそうなものを物色する。

とかいってるうちに時間はくる。そろそろ駅(というか建物は一緒なので改札)へ。

稚内駅にはホーム、線路ともに1本しかない。
リニューアルされたこともあって最果ての終着駅には若干旅情が足りない気もするが、しかしここが最北端。どう乗ったってあとは下るだけ、しかも次の分岐は(残念ながら)旭川市内に入ってからだ。

ということで、改札に入り、撮影し、乗車した後はひたすらに下る。つまり、ひたすらに乗る。
南稚内を過ぎるといきなり市街が途切れて、さっき行きかけて諦めた奥の見えない丘陵に分け入るかのように(大きく見れば同じ宗谷丘陵なのだが)淡々と走っていく。
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=Fy-RITU1fcA?rel=0&w=560&h=315]
そして、ひとつふたつ駅を過ぎたところで気がついた。
今乗っている宗谷線、そして石北線、釧網線、花咲線(と函館線の山線もそうかもしれない)は「自力での維持が難しい」とJR北海道が表明している区間で、下手をしたらここ数年で乗れなくなるかもしれない区間だ。
まぁ、「かもしれない」というだけで、様々な状況を加味すれば何らかの補助をしても存続させたほうがいいという判断も出るかもしれないが、今のうちに一度乗っておこう、と思ったのが今回の旅の目的でもある。
ところが、だ。路線が廃止されるより先に、もしくは路線が廃止されなくても無くなってしまうものがある。それは駅だ。
今春のダイヤ改正でJR北海道はずいぶん多くの駅を廃止した。卒業間近の高校生だけが利用する駅の話など、新聞サイトに掲載されて話題にもなった。それを忘れていたのだ。
路線だけなら特急で往復してもいいが、今回は普通列車の旅だ。駅の記録・記憶を残さずにどうする、そんな風に思えて来た。

いや、そんなこと言っても駅名標を入れて記録しないことにはどこの駅かわからないぐらいの板ホームと貨車待合室の連続なんだけれども。それでも記録できるところはやってみた。
そんな中で、ふと西の方を眺めると海の向こうに流麗な山体が姿をのぞかせる。
利尻富士か。

201709_hkd_06_genya
右端に利尻富士

なかなか撮れるものではないのでなんとか撮ろうとするのだが、線路脇の防風林や原野の低木に遮られてなかなか収められない。しばらく挑戦したがなかなか停まらないので難しい。
宗谷線レベルになると駅間距離が8kmや10kmは当たり前なので、撮り方に悪戦苦闘しているうちに豊富を過ぎて(温泉入りたし・・)幌延に到着。稚内を出発してから、南稚内を除いては初めての、「拠点駅」ぽい構えで、それらしく30分も停車する。(いやそんなに長くなくていい)
長時間停車なのはここで特急と行き違いをするからで、(後から調べてみたが)この先にある次の行き違い可能な駅が17km先だから、長いようだがここで特急をやり過ごすしかない。

車内のテツの皆様はといえば、思い思いに写真を撮ったり駅を眺めたり、車両から出て好きなようにやっていらっしゃる。まぁ、そんなものだ。思い思いにやり過ぎて出発時間を忘れる輩というかおっさんがいて、その辺は何とかして欲しいものだが。
幌延を出て、しばらく街並みは続くがまた「原野」に戻る。この鉄路の維持にどれほどの苦労がかかるか、そんなことも思いながら揺られる。そして稚内で買っておいた弁当を食べる。まどろむ。寝る。写真を撮る。

そうこうしてるうちに川が線路に寄り添い始めた、いや逆か。まぁいい。天塩川だろう。川もさほど手が入っていないので蛇行もしながら、鉄路もそれに寄り添いながら走る。そして天塩中川。

風雪に耐えた古く美しい駅舎が待っていた。じっくり眺めたいところだが、ここはさほど停車時間もなく出発する。なんせ行き違う列車もないのだ。普通列車にも旅情を求めにくい世情ではある。(なんせ買い物しようにも駅前のコンビニをチェックする時代だ)
列車は穏やかに、でもゆるゆるというほどの遅さでもなく、頑張っていると感じるほどの速さでもなく、淡々と南に下る。天気があまり良くないのがきになるが、雨でないだけよしとするか。
先はまだ見えない。

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